2026年8月1日施行|産業医の辞任・解任・退任の報告が義務化されました

2026年8月1日から、産業医の選任報告に加えて、産業医の辞任・解任・退任があった場合の報告が新たに義務化されました。

対象となるのは、原則として常時50人以上の労働者を使用する事業場です。産業医の交代や契約終了を予定している事業場では、人事・労務部門だけでなく、衛生管理者や衛生委員会の担当者も手続の流れを確認しておく必要があります。

本記事では、制度変更の概要と、事業者が今確認しておきたい実務対応を分かりやすく整理します。

制度改正の概要

これまでも、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任したときに、その内容を所轄労働基準監督署長へ報告する必要がありました。

労働安全衛生規則の改正により、2026年8月1日以降は、選任時だけでなく、産業医の辞任、解任または退任があった場合にも、遅滞なく報告することが必要になりました。

ここでいう用語は、おおむね次のように整理できます。

  • 辞任:産業医側の事情により職務を辞する場合
  • 解任:事業者側が産業医の職を解く場合
  • 退任:契約期間の満了などにより職務を終える場合

個別の契約関係や経緯によって取り扱いの確認が必要になることがあるため、判断に迷う場合は所轄労働基準監督署へ確認してください。

対象となる事業場

今回の報告義務の対象は、労働安全衛生法に基づいて産業医の選任義務がある、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。

企業全体の人数ではなく、原則として工場、支店、営業所などの事業場単位で確認します。複数の事業場を運営している企業では、それぞれの事業場について労働者数と産業医の選任状況を整理しておくことが大切です。

産業医の辞任等の時点で労働者数が50人未満となっている場合、法令上の報告義務はないとされています。ただし、労働局は産業医の選任状況を適切に把握する観点から、所轄労働基準監督署への報告を案内しています。

いつ、どこへ報告するのか

産業医の辞任・解任・退任があった場合は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長へ報告します。

報告は電子申請が原則です。次のサービスから手続できます。

  • e-Gov電子申請
  • 厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」

労働局の案内では、当分の間、書面による報告も可能とされています。利用できる方法や必要書類について不明な点がある場合は、所轄労働基準監督署へ事前に確認すると安心です。

後任の産業医を同時に報告する場合

前任の産業医の辞任等と後任の産業医の選任を同じタイミングで手続する場合は、後任者の選任報告に前任者の氏名と辞任等の年月日を記載することで、辞任等に関する単独の報告に代えることができます。

そのため、産業医の交代が決まった段階で、次の事項を一体的に管理すると手続漏れを防ぎやすくなります。

  • 前任の産業医の氏名
  • 辞任・解任・退任の区分と年月日
  • 後任の産業医の氏名、選任年月日、資格確認資料
  • 所轄労働基準監督署への報告日
  • 衛生委員会等への報告日と議事録

衛生委員会への報告も確認しましょう

産業医が辞任した場合または事業者が産業医を解任した場合、事業者は、その旨と理由を衛生委員会または安全衛生委員会へ遅滞なく報告する必要があります。

これは、今回の所轄労働基準監督署長への報告とは別の手続です。

産業医の交代時には、行政への届出だけでなく、衛生委員会等の議題、資料、議事録にも必要な記録が残っているか確認してください。なお、個人情報や契約上の機密情報については、委員会で共有する範囲を適切に検討する必要があります。

事業者が今すぐ確認したい5項目

1.産業医の契約期間と更新時期

契約書や委嘱状を確認し、契約満了日、自動更新の有無、解約・辞任時の通知期間を一覧化します。

2.社内の手続担当者

人事労務担当者、衛生管理者、事業場責任者など、誰が報告書を作成し、誰が提出状況を確認するかを決めます。

3.後任選任までの引継ぎ

健康診断後の就業措置、長時間労働者への面接指導、休職・復職支援、職場巡視、衛生委員会への出席など、継続中の業務を整理します。健康情報の引継ぎでは、利用目的、アクセス権限、保存方法にも配慮が必要です。

4.衛生委員会等への報告手順

辞任または解任があったときに、どの会議で報告し、議事録へどのように記録するかを確認します。

5.行政報告の控えの保存

電子申請の到達確認、提出した内容、添付資料などを、事業場ごとに確認できる状態で保存します。

産業医の交代は健康管理体制を見直す機会です

産業医の交代時には、報告手続だけでなく、現在の産業保健体制が事業場の課題に合っているかを見直すことも重要です。

例えば、次のような点を確認できます。

  • 職場巡視の結果が改善につながっているか
  • 健康診断後の医師の意見聴取が適切に行われているか
  • 長時間労働者や高ストレス者への対応手順が明確か
  • 休職・復職支援の判断基準と役割分担が整理されているか
  • 衛生委員会が実質的な審議の場になっているか
  • 産業医へ必要な情報が適時に提供されているか

手続を単なる届出で終わらせず、産業医が継続的に機能できる体制を整えることが、労働者の健康確保と事業運営の安定につながります。

産業医の選任・交代に関するご相談

小林産業医労働衛生コンサルタント事務所では、産業医の選任や交代、衛生委員会の運営、健康診断後の事後措置、職場巡視など、事業場の産業保健体制づくりを支援しています。

事業場の規模、業種、現在の体制を確認したうえで、必要な支援内容をご提案します。個別の届出要否や記載方法については、所轄労働基準監督署の案内も確認しながら対応することをおすすめします。

参考資料

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