9月は「職場の健康診断実施強化月間」|健診を受けて終わりにしないための実務チェック
厚生労働省は2026年8月21日、9月の「職場の健康診断実施強化月間」に関する重点事項を公表しました。
健康診断は、従業員に受診してもらうだけで完了するものではありません。結果の通知、異常所見がある方についての医師等からの意見聴取、その意見を踏まえた就業上の措置、記録の保存などを一連の流れとして進めることが重要です。
特に中小事業者では、健診の予約や受診勧奨はできていても、その後の対応が担当者個人の管理にとどまりやすい傾向があります。9月を、社内の運用を点検する機会として活用しましょう。
概要:2026年度の重点事項
「職場の健康診断実施強化月間」は、10月1日から7日までの全国労働衛生週間に先立ち、毎年9月に実施される啓発の取組です。2026年度の公表日は8月21日、実施期間は9月1日から30日です。
厚生労働省は、次の事項を重点として示しています。
- 一般健康診断の実施
- 医師からの意見聴取と、必要な事後措置
- 健康診断結果の記録・保存と、該当事業場から労働基準監督署への報告
- 必要な労働者への医師または保健師による保健指導
- 小規模事業場、外国人労働者、派遣労働者、個人事業者等への留意
- 医療保険者との連携(コラボヘルス)
- ストレスチェック、健康保持増進、職業性疾病の防止、治療と仕事の両立支援
これは新たな法律の施行そのものではなく、既存の義務や推奨される取組を集中的に確認するための月間です。
事業者への影響
事業場の規模にかかわらず確認が必要です
一般健康診断の実施義務は、原則として事業場の規模にかかわりません。パート・アルバイトであっても、契約期間や所定労働時間など一定の要件に該当する「常時使用する労働者」は対象になります。
常時50人未満の事業場では産業医の選任義務が原則としてありませんが、健康診断の実施や、異常所見がある方に関する医師等の意見聴取、必要な事後措置まで不要になるわけではありません。
「要再検査」の案内と「医師の意見聴取」は別の手続です
健診結果に「要再検査」「要精密検査」などの記載があった場合、本人へ医療機関の受診を勧めることは大切です。一方、事業者が行う医師等への意見聴取は、治療内容を決めるためではなく、現在の仕事を通常どおり続けられるか、勤務や作業に配慮が必要かを検討するためのものです。
対象となる労働者については、健康診断日から3か月以内を目安に医師または歯科医師の意見を聴き、健康診断個人票に記録します。その意見を踏まえ、必要に応じて労働時間の短縮、作業の転換、就業場所の変更などを検討します。具体的な措置は、本人の状態と業務内容を個別に確認して判断します。
行政への報告要否は事業場単位で確認します
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長へ提出する必要があります。人数は原則として会社全体ではなく、支店、工場、営業所などの事業場単位で確認します。
一方、50人未満でも健診の実施や事後措置は必要です。また、有害業務に関する特殊健康診断や歯科健康診断には別の実施・報告要件があるため、該当業務がある場合は個別に確認してください。
今すべき対応:7項目の実務チェック
1.対象者の一覧を確認する
正社員だけでなく、パート、アルバイト、有期契約社員を含め、雇用期間と週の所定労働時間を確認します。夜勤や有害業務に従事する方は、一般の定期健康診断とは異なる頻度・項目が適用されることがあります。
2.未受診者を把握する
受診予定日、受診済み、結果待ち、未受診を一覧化します。受診勧奨の記録も残し、勤務時間中に受診しやすい日程や代替日を用意します。
3.健診結果を本人へ通知する
事業者には、健康診断結果を労働者本人へ通知することが求められます。未通知の結果がないか確認します。
4.異常所見者の意見聴取を手配する
「所見あり」の対象者について、医師等へ次の情報を提供できるよう整理します。
- 健診結果
- 職種と具体的な作業内容
- 労働時間、深夜業、出張などの勤務状況
- 重量物、高温、騒音、化学物質などの作業上の負荷
- 現在実施している就業上の配慮
病名だけで機械的に判断せず、業務の実態を伝えることが、実行可能な意見を得るために重要です。
5.就業上の措置とフォロー日を記録する
医師等の意見を踏まえて措置を決めた場合は、内容、開始日、本人への説明、見直し予定日を記録します。健康情報は閲覧できる担当者を必要最小限にし、通常の人事資料と分けて管理することも検討します。
6.保存・報告を確認する
一般健康診断の結果は健康診断個人票として5年間保存します。常時50人以上の事業場では、定期健康診断結果報告書の提出状況も確認してください。
7.年間スケジュールに組み込む
健診日だけでなく、「結果回収」「本人通知」「医師等の意見聴取」「事後措置」「再評価」まで期限を設定します。担当者が変わっても継続できるよう、役割分担と保管場所を明文化しておくと安心です。
50人未満の事業場が利用できる支援
産業医の選任義務がない50人未満の事業場では、地域産業保健センターで、健康診断結果に基づく医師からの意見聴取などの支援を無料で受けられる場合があります。利用条件、回数、予約方法は地域により確認が必要です。
継続的な健康管理、休復職支援、長時間労働への対応、職場巡視などを一体的に整えたい場合は、外部の産業医・労働衛生コンサルタントとの顧問契約も選択肢になります。
健康診断後の事後措置に関するご相談
小林産業医労働衛生コンサルタント事務所では、事業場の規模や業種に応じて、健康診断結果の確認、医師の意見聴取、就業上の措置、記録様式や社内フローの整備を支援しています。
健診結果の医学的な評価だけでなく、実際の作業内容や勤務状況を踏まえ、事業者と労働者の双方が運用しやすい体制づくりをご提案します。個別の法令適用や届出要否について判断が難しい場合は、所轄労働基準監督署にもご確認ください。
参考資料
- 厚生労働省「『職場の健康診断実施強化月間』(9月)について」|2026年8月21日公表
- 厚生労働省「令和8年度『全国労働衛生週間』を10月に実施」|2026年7月31日公表
- 岡山労働局「健診結果に対する事後措置の流れ」
- 岡山労働局「健康診断の種類及び報告義務」
- 厚生労働省「定期健康診断結果報告書様式」
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